

2026.8.7
IRON, BRASS AND THE ART OF LIGHT
灯りを アートへ、Ystad Metallの仕事
今日ご紹介したいのは、スウェーデンのブランド「Ystad Metall(イースタッド・メタル)」のキャンドルスタンドたち。買い付けを続けるうちに、気づけば手元には様々な個体が集まっていました。
ガラスのお花や真鍮のチューリップの形をしたキャンドルスタンドも良く知られていますが、今回は金属を主に使ったアイテムたちとその資料にフォーカスしていきたいと思います。
黒く塗られた金属と、真鍮や銅の縁取り。キャンドルの小さな受け皿と金属脚の曲線。シンプルな道具でありながら、一つひとつがまるで小さな彫刻のように佇んでいます。
手元にある資料本と実物を眺めながら、このブランドの成り立ちとデザインの魅力について、少しお話ししようと思います。

A SMALL IRONWORKS IN YSTAD イースタッドの小さな鉄工所
Ystad Metallは、その名の通りスウェーデン南部・スコーネ地方の街「イースタッド(Ystad)」で生まれたブランドです。
手元にある資料本『Ystad-Metall 1919-1969』(Jonas Barros Eriksson 著)によれば、その歴史はおよそ半世紀にわたります。
興味深いのは初期の製品ラベルに「AB Järnarmatur(鉄金具会社)」という、今とは異なる社名が刻まれていること。本の中には「Ny fabrik, nytt namn(新しい工場、新しい名前)」という章があり、工場を新設したタイミングで「Ystad-Metall」を名乗るようになった様子がうかがえます。
当時の広告イラストには「…säg: Ystad-Metall(…イースタッド・メタルと、そう仰ってください)」の一文。まだ無名だったブランドが、少しずつ自分たちの名前を市場に浸透させていった過程が目に浮かぶようです。
名もなき鉄工所から、ブランドへ
本の中のページをめくると、同じ燭台でも脚の巻き方や腕の角度が少しずつ違うデザイン画がいくつも並んでいます。
一つの形に決まるまで、職人たちが手を動かしながら何度も検討を重ねた跡が伝わってきて、資料を眺めているだけでも時間を忘れてしまいます。

BETWEEN TRADITION AND MODERN FORM 伝統の曲線と、モダンの直線と
Ystad Metallの魅力は、なんといってもそのフォルムの振れ幅にあると思います。
くるりと巻かれた脚が特徴的な、鍛冶仕事らしい金属の燭台がある一方で、真鍮のリングを脚に見立てたような、ミニマルなキャンドルスタンドも存在します。
いずれも北欧の伝統的な鍛造(スミデ)の気配と、スウェーデンのモダンデザインを感じる作品たちです。
どこか、完璧ではない作り
どのタイプの作品にも共通しているのは、洗練されたデザインの中に手作業の様子と経年変化の良さを感じる点です。
キャンドルを受け止める部分にあしらわれた真鍮や銅の縁は経年で色味が深まり、黒い本体との対比が際立って見えます。
機械的な均一さではなく、人の手が加わったような曖昧なつくり。水平でなかったり、微妙にサイズが違ったり。それこそがヴィンテージならではの、何度も見返したくなる理由なのだと思います。

LIVING WITH FLAME 灯りを、暮らしに並べる
形の違うキャンドルスタンドを、あえて一つの棚にいくつも並べてみる。背の高いもの、低いもの、黒いもの、真鍮のもの。
灯りをともさなくても、その影の重なりだけでどこか物語性のある景色が生まれます。夜になって火を灯せば、揺れる炎が金属の陰影をさらに引き立ててくれるはずです。
実用品として使うもよし、飾ってフォルムを楽しむもよし。Ystad Metallのキャンドルスタンドは、そのどちらの楽しみ方も受け止めてくれる汎用性の高いアイテムだと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
