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Gunnar NylundとCarl-Harry Stålhane、ロールストランドの黄金期

2026.8.14

TWO POTTERS OF RÖRSTRAND'S GOLDEN AGE
Gunnar NylundとCarl-Harry Stålhane、ロールストランドの黄金期

今日はこれから僕自身が力を入れて集めていきたいと考えている二人の陶芸家について書きたいと思います。

スウェーデンの名窯Rörstrand(ロールストランド)で、それぞれの時代にアートディレクターを務めた、Gunnar Nylund(グンナー・ニールンド)とCarl-Harry Stålhane(カール・ハリー・スタルハン)です。

荒々しい土の質感の器もあれば、静かで端正な佇まいの器もある。作品によって印象はさまざまですが、二人の器を並べていると、どこか同じ空気を感じることがあります。

手元にある器たちと資料を照らし合わせながら、Rörstrandという一つの窯を舞台に二人が育んだ共通点、そしてそれぞれがその後歩んだ道について、僕自身の視点で考えてみようと思います。

TWO ARTISTIC DIRECTORS, ONE GOLDEN AGE 二人が築いた、ロールストランドの黄金期

Rörstrandは1726年、スウェーデン・ストックホルムで創業した同国を代表する陶磁器ブランド。約300年にわたり、日常の食器からアートピースまでを生み出してきました。中でも量産ラインとは一線を画す「ATELJÉ(アトリエ)」と呼ばれる工房部門が、この二人の主な活躍の場です。

Nylundは1904年デンマーク生まれ。Bing & Grøndahlや自ら興したSAXBOでマットな器づくりを重ねたのち、1931年からロールストランドのアートディレクターに就任します。独特のマット釉や動物オブジェ、日常使いのテーブルウェアを数多く手がけ、ブランドの黄金期を築きました。

そして1939年、18歳のStålhaneがロールストランドに絵付師として入社します。画家Isaac Grünewaldの助手として一点物の絵付けを学んだのち、1955年、ニールンドの後任としてアートディレクターの座を引き継ぎました。

中国の古典陶磁を思わせる端正なフォルムと、落ち着いた釉薬の器で、黄金期をさらに次の時代へとつないでいきます。

バトンを渡された、ひとつの黄金期

ひとつのブランドの中で、師にあたる陶芸家から弟子にあたる陶芸家へと、アートディレクターの座がそのまま引き継がれた。そんな例は、北欧ヴィンテージ全体を見渡してもそう多くはないと思います。

手元の器を並べていると、僕がこの二人の作品にどこか同じ空気を感じるのは、単なる偶然ではなく、この師弟関係あってのことなのかもしれない、と思えてきます。

A LANGUAGE PASSED BETWEEN THEM 二人の器に流れる、共通の言葉

正直に言うと、僕自身も最初は「ニールンドは荒々しい造形、スタルハンは端正な造形」と、なんとなく分けて捉えていました。ニールンドといえば、幾何学模様を型押しした「Domino」や「Eterna」シリーズ、素朴で力強い動物のオブジェのイメージが強かったからです。

けれど手元にある茶色のボウル「ARO」を眺めていると、印象はがらりと変わります。流れるような縁のライン、単色ではなく複雑に混ざり合う釉薬。彫刻のように完成度の高い、とても繊細な1点です。

これもまたニールンドの仕事。一人のデザイナーの中に、力強さと繊細さ、両方の顔があることに気づかされます。

スタルハンも同じです。中国・宋代の古典陶磁を思わせる端正な単色釉の作品がある一方で、量産ラインの器にも、釉薬の掛かり方ひとつで表情がまったく変わるものがあります。

師弟関係にあった二人だからこそ、こうした振れ幅の大きさそのものが、共通の資質として受け継がれているように思えます。

受け継がれた、釉薬という言葉

様式の話だけでなく、二人にはもっと具体的なつながりもあります。

ニールンドが確立した、兎の毛並みのような質感を持つマットな「ヘアーズファー釉」は、後を継いだスタルハンにも受け継がれ、彼の手によってさらに広く知られるようになったと言われています。

同じ釉薬の言語を引き継ぎながら、スタルハンはそこに中国・宋代を思わせる端正な単色釉を重ねていきました。

ロールストランドの裏印には「R」の王冠マークに加えて、ニールンドの作品には「GN」、スタルハンの作品には「CHS」と、それぞれのイニシャルがデザイナー自身のサインとして刻まれます。

量産ラインの器であっても、釉薬は一点ずつ手作業で掛けられていたそうで、同じ形の器でもよく見ると表情が少しずつ違うのはそのためです。買い付けのたびにそのサインを見つける瞬間は、何度経験しても心が躍ります。

WHAT CAME AFTER RÖRSTRAND ロールストランドを離れてから、それぞれの時間

1973年、34年在籍したロールストランドを退社したスタルハンは、自身の工房Designhusetをリドショーピンに設立します。

1985年には、中国・景徳鎮の伝統的な窯を模した「中国式窯」を独自に導入。地元の粘土や鉱物の研究とあわせて、師の影響から一歩離れた新しい表現を追求していきました。

1963年から71年にかけては、ロールストランドでの仕事と並行してヨーテボリの工芸学校で陶芸を教えるなど、後進の育成にも力を注いでいます。

一方のニールンドは、1955年にアートディレクターの座をスタルハンに譲った後、1959年にはデンマークのNymølle(ニモーレ)陶器のアートディレクターに就任します。

並行してロールストランドやガラス工房Strömbergshyttanのフリーランスとしても仕事を続け、1960年代半ばにロールストランドの経営が交代した後は、再び同社の仕事を請け負うようになったといいます。

晩年は南スウェーデンの町ロンマに自身の小さな工房を構え、静かに作陶を続けながら、娘のBie Nylundとの対話をもとに回顧録をまとめました。1997年に世を去るまで、生涯現役の陶芸家であり続けたのです。

それぞれの陶芸の道

師から弟子へ、そして弟子が自分なりの表現へと発展させていく。ニールンドとスタルハンという二人の陶芸家がロールストランドという一つの窯でバトンをつないだ約30年間は、そのままスウェーデンの陶芸が世界的な評価を得ていった黄金期とも重なります。

力強さと繊細さ、その両方を併せ持つ二人の器。ノルマートが掲げる「すべての人に美しさを」というミッションのフィルターを通し、これからもこの二人の作品を扱っていきたいと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人:Yuki Hasegawa (Normartオーナー)

北欧ヴィンテージ食器やアート雑貨を扱う Normart(ノルマート)を運営。
「すべての人に美しさを」をミッションに、北欧ヴィンテージが持つ美しいデザインやストーリーを通して、 自分らしく、心地よく過ごせる暮らしをお届けしています。