

2026.7.23
A SCULPTOR AMONG MATERIALS
木も、陶も、真鍮も。異素材へのアプローチ
ここ数日、キャンドルを灯すためのヴィンテージアイテムがいくつか入荷しています。今日ご紹介したいのは、そんな灯りの道具のひとつ、真鍮でできたキャンドルスタンドです。
手がけたのは、デンマークの巨匠デザイナー、Jens H. Quistgaard(イェンス・H・クイストゴー)。彼が設立にも関わったブランド「Dansk(ダンスク)」の一品です。
今回は彼がデザインした真鍮のキャンドルスタンドを入り口に、木工、陶器、金属と、さまざまな素材を渡り歩いたクイストゴーというデザイナーのものづくりへの向き合い方について、少しお話ししようと思います。

A SCULPTOR FIRST 彫刻家であることの原点
Jens H. Quistgaardは1919年、コペンハーゲン生まれ。彫刻家であった父のもとで彫刻の基礎を学び、若い頃には銀細工の仕事にも携わったと言われています。
工業製品のデザイナーである前に、まず彫刻家であり、金属を手で加工する職人でもあった。この経歴が、彼のものづくりの土台になっているように思います。
手元にある真鍮のキャンドルスタンドも、まさにその延長線上にあります。球状の継ぎ手と、すっと細くくびれた棒状のパーツ。ひとつひとつは単純な形なのに、いくつも連なることで、まるで手彫りの彫刻のような有機的なシルエットが生まれています。
継ぎ手ひとつにも、彫刻の呼吸
連結部をよく見ると、球体のふくらみから棒状の部分へ、なめらかに絞り込まれていく曲線が見えます。工業製品としての精度を保ちながら、手が生み出したような柔らかさを両立させる。ここに、彫刻家としての目と、量産デザイナーとしての手際が同居しているのだと感じます。

THE BIRTH OF DANSK Danskという舞台、木の仕事
Quistgaardの名を広く知らしめたのは、1954年に興ったブランド「Dansk International Designs」です。アメリカ人実業家テッド・ニーレンバーグがコペンハーゲンでクイストゴーと出会い、意気投合したことから生まれたブランドで、彼はその創業デザイナーを務めました。
Danskが最初に世に送り出したのは、チーク材の柄を持つステンレスカトラリー「Fjord」。続く木製のボウルやサラダサーバー、アイスバケットなども大きな反響を呼び、チークという素材そのものが、北欧デザインの温かさをアメリカの食卓に伝える役割を果たしました。
木の柔らかな質感と、金属や磁器の機能性を組み合わせる。この発想こそが、Danskというブランドの核だったのだと思います。
道具に、木のぬくもりを
チーク製品のひとつをとっても、握ったときの手触りや重心のバランスまで考え抜かれています。実用品でありながら、暮らしの中にそっと彫刻を置くような佇まい。この姿勢は、後の陶器や金属の仕事にもそのまま受け継がれていきます。

STONEWARE, AND A CIRCLE OF LIGHT 陶器と、真鍮に宿る有機的なかたち
Quistgaardは木工やカトラリーだけでなく、オーブンからそのまま食卓に運べる耐熱陶器のシリーズも手がけています。ノルマートでもReliefやCordial、Mexicoシリーズなど普段から扱っている食器類も多くデザインしました。
艶やかな釉薬をまとった、温かみのある茶系の器たち。飾るための工芸品ではなく、日々の暮らしに使い込んでこそ美しくなる道具として設計されているところに、彼の一貫した姿勢を感じます。
そして、この真鍮のキャンドルスタンド。球状の継ぎ手を連ねて輪にすれば、テーブルの中央を彩るセンターピースに。複数を整然と並べれば、棚の上でリズムを刻む小さなオブジェにもなります。
木も、陶も、真鍮も。素材は違っても、そこに流れているのは同じ手つきのように感じます。
工業製品としての合理性と、彫刻家としての有機的な造形感覚。この両方を並び立たせてしまうところに、Quistgaardというデザイナーの懐の深さがあるのだと思います。
灯りを灯しても、灯さなくても、佇まいだけで十分に絵になる。そんなヴィンテージアイテムを、ぜひ手元でも楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
