

2026.5.1
POTTERY FROM DENMARK AND SWEDEN
土と火、北欧のプリミティブを巡る
暖かい日が続き、春を感じる季節となりました。……なんて思っていたら、あっという間に桜も散り、初夏の気温を感じる日も増えてきました。そしてここ数日はまた肌寒い日に逆戻り...本当に体調管理が難しいなぁ、と感じます。皆様もお身体にはご自愛くださいね。
さて、先月15日より、ノルマートとしては初の挑戦となる、オンライン企画展「デンマーク・スウェーデンの陶芸展」を開催しています。実はこのブログ、企画展開催前に書き出したものの、バタバタとしていたら企画展終了まで1週間を切ってしまいました。
企画展に対する想いなど、もっと早くお伝えしたかったなと思いながらも、企画展終了前に投稿できたので無理矢理良しとしようと思います...。
今回の企画展はこれまで少しずつ、大切に集めてきたヴィンテージアイテムの中から、約50点の陶芸作品をセレクトしました。
僕が普段、デンマークやスウェーデンから買い付けているものは、大きく分けると「陶磁器」と「ガラス」。その中でも僕は、どうやら「土」を感じる作品に強く惹かれるようです。気づけばオンラインストアには、自然とそんな体温を感じるアイテムたちが並んでいました。
今回の展覧会にあたっては、いつものラインナップに加え、小さな工房や個人アーティストの作品も手に取ってみたいという想いがありました。そうして辿り着いたのが、この「陶芸」にフォーカスした企画展です。
並んでいるのは、僕が今、改めて「美しい」と感じるものを凝縮したラインナップ。
ただ商品を並べて販売するだけでなく、オンラインという場所で、いかにその場の空気感を体験してもらえるか。ノルマートが大切にしている「美しさの基準」を、一つの企画展という形でお届けしたいと考えました。
今回のコラムでは、この企画展に込めた想いと、僕のルーツにある「土」の話を少しだけお話ししようと思います。

ROOTS IN TAJIMI, MINO-YAKI 僕のルーツ、美濃の「土」
僕の出身地は、岐阜県多治見市。以前のコラムでも少し触れましたが、言わずと知れた美濃焼の産地です。
陶磁器関係のメーカーや商社が多く、登り窯の跡や陶片が転がっている。それが、子どもの頃から当たり前の風景でした。
僕の親世代には「食器は買うものじゃなくて、貰うもの」なんて思っている人も多く、身近に美濃焼の製造に関わっている人がたくさんいました。地場産業がすぐ側にある環境で育った方には、あるあるな話かもしれませんね。
日本で使われている半数以上の食器が「美濃焼」と言われるほどの流通量を誇る、巨大な産地。小さな頃から、意識せずとも「土」や「器」に触れていたことは、今思うと北欧ヴィンテージの良さに惹かれることになる、きっかけの一つなのかもしれません。
類い希なる美濃の「土」
「美濃焼って何がいいの?」と聞かれることがあります。多くの人は「特徴が無いのが美濃焼」と答えます。今考えると、少しだけ寂しい回答ですよね。
けれどその裏側には、どんなものにでもなれる、特定の様式に縛られない「多様性」という強さが隠れています。そして先日ある勉強会で、美濃焼が最も秀でているのは何より「土の良さ」だということを教わりました。
専門的な話をすると長くなってしまうので割愛しますが、美濃地方で採れる土は、世界的に見ても類を見ないほどの特性を持つ、特別なものだそうです。
この「土」の話を深く知ったとき、僕の頭に浮かんだのは、いつも扱っている北欧ヴィンテージたちのことでした。
素材としての土の良さ、その魅力をまっすぐに伝えられるピースが、僕の手元にはたくさんある。その気づきが、今回の企画展へと背中を押してくれました。

THE HARMONY IN BETWEEN: CLAY AND GLAZE 土と釉薬、その「あわい」
今回、企画展のテーマとして選んだキャッチコピーは、「土と釉薬、そのあわい」。
「あわい」とは、二つのものの間(あいだ)や境界を意味する大和言葉です。対象となる二つのものが重なり、揺らぎ、溶け合う……そんな中間領域を指す、とても深いニュアンスを持っています。
焼き物は、土と釉薬の組み合わせによってその表情が大きく変わります。それだけでなく、窯の中の温度やその日の天気といった外的な要因によっても、姿を変えていく。
つまり、今回の陶芸展でセレクトした焼き物たちが織りなす表情は、どれもが「唯一無二」だったりするのです。
まるで奇跡のように生まれた陶芸作品の、土と釉薬という異なる二つのものの「あわい」に焦点を当て、その二つが見事に調和された陶芸作品の良さにアプローチすること。それが、今回の企画展の目的でもあります。
素材の声を聴く愉しみ
セレクトしたのは、デンマークとスウェーデンのヴィンテージ作品たち。力強い土の良さを湛えながら、同時に美しい釉薬の表情を纏ったものばかりです。
普段から扱っている馴染みのブランドもあれば、この企画展のために特別にセレクトした個人作家や小規模工房のアイテムもラインナップに加えました。
厚くかかった釉薬が熱で縮れた様子や、土に含まれる鉄分がポツポツと浮き出た表情。それらはすべて、数十年という時間を経て、さらに静かな深みを増しています。
量産品にはない、一点一点異なる「揺らぎ」のようなもの。その個性を慈しみ、楽しむことこそ、ヴィンテージを所有するいちばんの醍醐味だと思っています。

AN ONLINE JOURNEY OF EXPERIENCE オンラインで「体験」を届ける
「なぜ、オンラインで企画展なのか」。それは、単なるオンラインストアでのお買い物以上の時間を、皆さんに過ごしてほしいと思ったからです。
画面越しではありますが、作品の背景にあるストーリーや、その手触りまで想像が膨らむようなコンテンツを目指しました。これまでノルマートをご利用くださっている方はもちろん、この場所で新しく出会う方にも、ノルマートが大切にしている美しさの基準を感じていただければ嬉しいです。
約50点の作品たちは、すべてが一点もの。どれも僕自身が、思わず「自分のコレクションにしたい」と心から思えるものばかりを揃えました。
一期一会の出会いを楽しみに
作品を眺め、どれが自分の暮らしにフィットするかを考える時間は、とても贅沢なものです。お気に入りの椅子に座って、ゆっくりと展示会場を歩き回るような気持ちで覗いてみてください。
幼少期から多治見の土や陶器に囲まれて過ごしてきた僕の視点と、遠く海を越えてやって来た北欧ヴィンテージたちが交差する場所。
この企画展が、皆様にとって特別な「美しさ」を見つけるきっかけになりますように。
